スジ煮込み丼
次の日、土曜日で集団下校の日だった。ワタシの地区のメンバーで小6の男子が帰り道に、「集会所に裸足の女がいる」から、「みんなで見に行こう」と持ち出してきた。それでみんなで行ってみると、そこには人はおらず、なーんだ、といった感じで集団下校グループはそこで解散した。
今思えば、なぜみんなで見に行く必要があったのだろうと思う。
好奇心、と言えばそうなのだけど、当時ワタシの属する地区の子どもたちは、なぜか仲が良く、地区にも愛着があったように思う。言い方を変えれば、ある種の縄張り意識だろう。
それゆえ、見知らぬ女性がいることに自警団的な感情を抱いたようにも思った。
☆
当時は、あの女の人は多分家出してきた人なのだろうと親たちが言っていたのでワタシもそう認識した。
でもなんで裸足?
という疑問だけが残った。ワタシの地区は山間で道もデコボコした舗装の良くないアスファルト道が多く、決して歩きやすいはずがない。
徒歩でここまで来たということは、所詮この辺りの人間のはずで、ココがそういう土地であることはなんとなくわかるはずなのに。
家出するんなら靴ぐらい履いて出てきたらいいのにね、ヘーンなヒト!
彼女の剥き出しになった白い脚だけがなぜか印象に残ったまま、現在に至るまでスッカリ忘れていた。
☆
今にしてみれば、彼女が裸足だったということはなんとなく理解できるように思う。
その昔ワタシが好奇心を掻き立てられた彼女の存在は、地方にいて、いるのに見ることのできないヒトビトの一人だったのかもしれないと思う。
それと同時に、小さい頃ワタシが彼女に抱いた自警団的好奇心を、苦々しく思う。
もしあの時、彼女に遭遇していたらワタシたちは一体彼女に何をしていたのだろう?ここにいてはいけないんだからなッという類のメッセージを彼女にぶつけたのではないか?
胸がどきどきした。
考えたくないが嫌な予感ばかり持つ。
ワタシの住む地方などこんなものだ。
でも嫌だと思っている。
テレビで女性の活躍〜と言っていた。嬉しくもある。けど、なんだか言葉にできない。できないけど。
☆