街の古本屋にて
先々週あたりに、野暮用で一人他県へ。
☆
用事も早々にケリが着いてしまい、思わぬ時間が空いた。
野暮用といっても、後味があまり良くなく、気分も晴れず。
でもすぐに帰るのも勿体無い気がして、かといってしたいこともないまま、しょぼしょぼと歩いていた。
☆
駅前の通りをぶらぶらと。
通販で買ったウォーキングシューズを履いてきたものの、靴擦れ発生。地味に痛い。
駅は海の近くに位置しているからか、暑いけど涼しい風が吹いている。
昼ごはんも食べたし、コレといってしたいこともなく。でもまだ1時過ぎだし、帰路につくのもユウウツなのだ。
カフェか喫茶店があれば入ろうかなと思っていた時、一軒の古本屋を見つけた。
ガラス張りのドアの向こうの店内には、茶色くくすんだ本たちが両サイドの壁際と中央の本棚にびっしり並んでいた。並べ切れていない本が床に大量に平積みしてあったり、よく見ると奥のレジ付近は本が大量に散乱していた。
うむ。
見るからに個人経営の古本屋だな。
店内は人の気配がなかったものの、ちょっと覗いてみることに。
☆
ところでヒトの本棚を見るのが好きだ。
本棚に並んでいる本を見れば、そのヒトがどういう考えの持ち主かわかるという。
どれどれと何順で並んでいるかもわからず、店主がどんなセレクトで攻めているかもわからぬまま、本棚を拝見させていただく。
店内は、天井が高く、私が知っている古本屋のなかでは広々としている方だ。
一通り見渡してみて、おそらく人文系の古本屋さんなのだろうと。
それでいてちょっと硬派な感じだ。いわゆるサブカルっぽさが見られない。店主は六十代かもしれぬ。
よくよく見てみると、噂には聞いていたけど、といった感じの興味深い品がぽつぽつと混じっている。
こういう品々を見つけてしまうと、いつのまにか目を皿にしている自分が。
途中、レジ付近で男性メガネ店主が、コーヒーでも淹れるかあ?と声をかけて下さったのだけれど、びっくりしたのと夢中になっていたのとで、け、けっこうです、と口ごもりながらあわてて申し出を断る。
いつまでたっても人見知りが抜けない。
あと、あの年代の御仁とほとんど喋ったことがないので、どう接すれば失礼にならないかわからない。ぐぬ。
☆
数冊欲しい本を選別して、レジへ。
まあ分かっていたことだけど、店主は客がどんな本を買っているのかチェックしているのだろうなと思って顔色を伺っていると、やっぱりニヤニヤしていた。
なんか恥ずかしい。
四冊もバラで買えば嗜好の一端はわかるものかもしれない。自分の嗜好はほとんど人受けする自信がない。だから人にもとんと話さない。でもそれでいいのだと思っているのだけど…
ぼんやり精算が終わるのを待っていると、メガネ店主が、この本読んだことあるかあ?と本を見せていただき、ボツボツと話すことに。
大体30分くらい話す。
わかったのはやっぱり六十代だったことと、経済学部出身だったということと。
うむ。
この店主、期待を裏切らないゼ。。
☆
以前知人に、古本屋の店主と話してみるといいことあるよ〜と教えてもらったことがある。
ただ、私のような人間の経験だと、店主が話しかけてくれたときだけ話が弾む(多分、店主の方も暇なのだと思う)。で、大体私の方が聞き役になっている。
知人がなぜいいことあるよ〜と言ったかはいまだによくわからない。
私の議論ギライもあるかもしれない。
でもちょっと楽しかったかもしれない。
うむ。
☆
本が見知らぬ人とのコミュニケーションツールにもなるということを久しぶりに実感。
あと、知らない街で古本屋めぐりするのもなかなか面白いかもしれないとも。
それぞれにたたずまいというものがあるものだな、と帰りの電車のなかで早速買った本を読み耽りながら思ったのでした。
あと靴屋さんに行ってサイズの合ったスニーカーを探そう。
☆
おやすみなさい