アンナ=カレーニナの服
言わずと知れたトルストイ翁のアンナ=カレーニナ。人妻のアンナが若いウロンスキーと不倫をしてしまうというのが話の筋。
アンナがウロンスキーと出会う前だったか、人の気持ちを華やかにするためにオシャレをするというくだりがある。ここを読んだ時、少し感動した覚えがある。それまで自意識のために着飾るのだと思っていたからだ。他人への気配りなのねとふむふむ。
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読んだ時は気づかなかったが、『アンナ=カレーニナ』のなかで服に言及する場所が他にもある。確かアンナの姪っ子だったのだと思うのだけど、年頃の彼女は魅力のある素敵なアンナを慕っており、アンナにラベンダーだったか藤色だったかとにかく薄紫色のドレスがきっとよく似合うわ、と褒める。
ふじ色は確かに華やかだし、大人な感じの落ち着いた色だと思う。紫の上。しかし、パーティーにアンナが着てきたのは黒色だったのだ。
その年頃の姪っ子はパーティーでお目当ての殿方(ウロンスキーだったような)から相手にされず、ウロンスキーは黒のドレスを着たアンナに目前で惹かれて行ってしまう。そのままアンナはウロンスキーと不倫の仲になっていく。
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作者のトルストイ翁はけっこうストイックな御仁のイメージなので、貴族的なものに批判的な感じもする。とはいえアンナもそこまでひねくれきった悪女という感じもない。貴族の退廃的な側面を描きたかったみたいなのはあったのだと思う。
要は服のことなのだけど、おそらく服には人の気持ちを華やかにする機能もあるだろうし、人を惹きつける機能もあるのだろうということだ。まただらしのない格好だと不快にさせたり、遠のかせたりする機能もあるだろう。あるいはきちんと綺麗な格好でもそれがかえって不快だと思う人もいるだろう。人は服からいろいろなメッセージ受け取ることができる。どんなメッセージを受け取らせることができるかはTPOとか状況などである程度操作できるとは思うが、完全にコントロールできるのか?
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話を元に戻すと、アンナは人の気持ちを華やかにさせたくてオシャレをしていたらしいのだけど、それがウロンスキーを惹きつける一因になっているような書き方だった感じがしたのだ。ゆえにオシャレしたら良くないことが起きるということを言いたいのではなく、良かれと思って着てる服でも思わぬ結果を招くこともあるということを考えたのだった。
トルストイ翁がどういう意図だったかはわからない。
まあ、今夏も服はいろいろ買った。わりとどこへ行くにもドレスコードを気にしている。気にしなければならないと言い募りたいとも思わないが、気にしなければならないなりにアレコレ言われるだけだ。
上の文章はまあまあうろ覚えなところがあるので、違ってたらすんません。